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市場研コラム

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 文学にみる「マネー&相場」−5− <鍋島>  (2005.07.26)


浅田次郎著『勝負の極意』
30年間、競馬で飯を食った男


 1997年に『鉄道員(ぽっぽや)』で直木賞を受賞した浅田次郎氏(1951〜)は引っ越し好きで、これまでに20回以上引っ越した。そんな引っ越し魔を日本経済新聞はある年の元旦特集「住まい新時代―家を建てる喜び、住む喜び」でフロントに起用した。日経の“逆張り”作戦は功を奏して話題を呼んだ。
 浅田さんと住宅は不似いだが、バクチを語ると天下一品本書の「まえがき」でこう述べている。
勝負の極意
 「悲しいかな文才はないが、博才はあった。しかも、『2分間で金が稼げれば小説を書く時間ができる』という一念がを言った。その点、私ほど真剣かつストイックに競馬をやった人間は、そうそういないと思う」

 「私は競馬で飯を食ってきた」と豪語するだけあって、説得力がある。

 「馬券とはそもそも何かというと、これは八十から25%の手数料を取られる有価証券の一種であるその配当金はどんな財テクにも優っているが、ほとんどの場合は不渡りとなる。数学的に判断すれば、私たちは馬券を買うことによって、1,000円を750円と交換し続けているわけで、競馬でほとんどの人が損をするのは当たり前なのだ」
 それでいて、馬券を買う人は跡を絶たない。それは人間が「一攫千金」の夢を捨てきれない動物であるからだ。経済学者のケインズも言っているが、「人生はそんなに永いものではない。だから手っ取り早い金儲けには格別の関心がある」。
 浅田さんは25%の手数料を「賭場のテラ銭」にたとえる。
 「テラ銭とは、江戸時代に町奉行の捜査権の及ばぬ寺や神社を借りてバクチを打ち、場所代として寺野坊主に支払った手数料をその語源とする。『坊主もうけ』という言葉の語源も実はこれである」
 「博徒」を辞書で引くと、「ばくち打ち」と記されているが、浅田さんは異説を唱える。
博徒とは、バクチを開帳してテラ銭を稼ぐ商売人のことで、「博徒がバクチを打ってどうするんだ」と若い者を説教したという。それくらいバクチの胴元は堅い商売だった。それにしても、今日のテラ銭(25%)に比べれば、昔のそれははるかに低かったはずで、おそらく5%程度ではなかったか。  浅田さんは「現代の競馬は先行力」を再三強調したうえで鉄則4カ条を披露する。
 
@ 馬券の軸は先行馬。追込み脚質を軸にするな。
A 穴をあけるのは人気薄の逃げ馬。
B トツゼン先行して負けた追い込み馬は次回も買い。
C テンにズブくなった先行馬は当分消し。

(画像は「勝負の極意」幻冬舎アウトロー文庫)

【 鍋島 高明(なべしま たかはる)略歴 】
■昭和11年高知県生まれ。34年早大政経卒、日本経済新聞社入社。47年商品部次長、夕刊コラム「十字路」に執筆。58年同編集委員、夕刊「鐘」、朝刊「中外時評」に執筆。日経金融新聞で『ニッポン相場師列伝』連載中

■日経産業消費研究所、日経総合販売を経て、平成9年友人5人で(株)市場経済研究所を設立、現在代表取締役。

■著書『相場師奇聞』(河出書房新社)、『相場師異聞』(同)、『今昔 お金恋しぐれ』(同)、『ヘタな経済書より名作に学べ 金と相場』(河出書房新社)、『鎧橋のほとりで』(米穀新聞社)、『市場雑観 商品記者の切抜帳』(五台山書房)、共著『フューチャーズ群像の素顔』(市場経済研究所)、『日本市場史』(日経事業出版社)ほか。

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