文学にみる「マネー&相場」−9− <鍋島> (2005.10.27)A・ビアス著(奥田俊介他訳)『悪魔の辞典』 手放す時以外は何の役にも立たない物 |
Wall Street (ウォール街) 「あらゆる悪魔が非難する罪の象徴。ウォール街が泥棒の巣だというのは、天国における希望の代わりをしてくれるという、どのへまな泥棒もが持つ信念である。あの偉大で善良なA・カーネギーでさえ、このことを信じていると公言している」 ![]() 「手放すとき以外、何の役にも立たぬ恩恵物。教養の証拠であり、上流社会への入場券。支持できる財産」東大の名物教授、和田垣謙三(1860−1919)博士は東京商業学校(現東京学園高校)の校長でもあったが、生徒から「どうしたらお金ができますか」と問われたことがある。和田垣先生が年中、債鬼に追い回されていることを先刻承知の生徒たちは先生にお金のつくり方などあろうはずがないと考えていた。生徒たちの底意地悪い質問に対し、先生は言下にこう答えた。「猿の毛を抜け」。きょとんといる生徒にやおら謎解きして言った。 「猿はmonkey、そのkを抜いたらmoneyになるだろうよ」。 Debt(借金) 「奴隷監督が使用する鎖と鞭の代わりをする巧妙なしろもの」東大教授の金井延(1865−1933)は、日露戦争に先立ち、開戦論を唱えた七博士の1人として歴史書に名を残すが、ある時、「人間は借金を払う動物である。これローマ以来の真理である」と言い放った。この時、異論を唱えたのが前出の和田垣謙三で「金井君の説は間違っている。人間は借金の利息を払う動物である」と反論した。 Riches(富) 「天からの授かりもの、『これこそ心から満足しているわたしの最愛の息子』を意味する―ジョン・ロックフェラー」A・ビアス(1842−1914?)は生前、ジャーナリストとして高名を馳せた。辛辣(しんらつ)な諷刺家として世に知られ、コラムニストの地位を高めたという。ビアスの名が世に喧伝されたのは1896年のことだ。サザン・パシフィック鉄道の老社長ハンティントンが7,500万ドルの政府融資を棒引きにさせるべく虫のいい提案をした時、諷刺の筆鋒鋭く迫り、粉砕してしまったのである。ビアスに攻め立てられて音を上げたハンティントンはビアスに買収の話を持ちかけた。するとビアスは胸を張って「私の値段は7,500万ドル」と答え、ハンティントン翁はとうとう白旗を掲げたのだった。 ビアスは1913年10月2日、動乱のメキシコに向けて旅立ち、そのまま消息を絶った。 (画像は<A・ビアス 著>「悪魔の辞典」収蔵から引用) |
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