株式会社市場経済研究所

市場研コラム

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人物秘話、ときどき相場談義 2[鍋島高明](2014.07.14)

相場師梢風、蛎殻町に現る

占い師

 作家の村松梢風が東京蛎殻町でコメ相場にはまるきっかけは郷里の母親からの手紙であった。ある占い師に息子梢風のことをみてもらうと「この人は今年相場をやると大成功する」という卦が出た。そして向こう3カ月間の相場高低表と合わせて500円の為替が入っていた。大正時代の500円だから今の価値にすれば、ざっと100万円か。
 梢風はかねてコメ相場に興味を持っていたから飛び上がって喜んだ。まず相場師らしい格好が肝要と、質に入っていた結城つむぎの着物や帯を請け出し、それに黒塩瀬の前掛けをかけて、相場師らしいりゅうとした出で立ちである。そういえば「味の素」の創始者、2代目鈴木三郎助も蛎殻町に通っていた時代、相場師らしい装いで勝負に臨んだ。
 さて、梢風。ある仲買店の2階を根城に毎日前場後場、売った・買ったと相場と取っ組み合い。もともと博才のない梢風。ここぞというところでは大きく勝負に出なくては始まらないが、度胸がなくて毎日チビチビとけちな相場を張っていた。
  チビチビやっていると500円のカネは結構もった。飲む、打つ、買うの3拍手というが梢風は買う専門。「乾坤一擲打って出る決断と退く勇気。その呼吸に勝負の分かれ目がある」と知ったところで、相場師梢風は退場となる。

【 鍋島 高明(なべしま たかはる)略歴 】

昭和11年高知県生まれ。34年早大政経卒、日本経済新聞社入社。
47年商品部次長、夕刊コラム「十字路」に執筆。
58年同編集委員、夕刊「鐘」、朝刊「中外時評」に6年間執筆。
日経電子版に『相場師列伝』連載中。
インターネット上の「鈴木商店記念館」監修。

日経産業消費研究所、日経総合販売を経て、
平成9年友人5人で(株)市場経済研究所を設立、現在代表取締役。

■著書
『日本相場師列伝』『日本相場師列伝U』『語り継がれる名相場師たち』(以上日経ビジネス人文庫)、「海坊主と恐れられた男 岩崎弥太郎」「大番頭金子直吉」(高知新聞社)
『ヘタな経済書より名作に学べ 金と相場』(河出書房新社)、
『鎧橋のほとりで』(米穀新聞社)、『北内正男と二家勝明−たどり着いて未だ山麓』