株式会社市場経済研究所

市場研コラム

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人物秘話、ときどき相場談義 3[鍋島高明](2014.07.16)

慶大時代、賭博師修業の近藤紡

近藤信男

 昭和を代表する相場記者藤野洵が残した数々の相場師の伝記の中で「天下の相場師 人間近藤信男」は代表作といえる。マスコミ嫌いで知られる近藤紡の策動ぶりを日経新聞など日刊紙はK紡績とかK氏などと記すしかなかったが、戦後の商品、株式市場でこの人ほど話題を提供した相場師はいないだろう。作家の城山三郎も近藤紡をモデルにした伝記小説「一発屋文六」を残した。
 藤野洵は近藤信夫伝を書くに当たって長男禎男氏や関係者を幅広く当たり、資料も山と集め苦吟したらしい。「ぼう大な資料、古書、メモを前にいたずらに茫々として、机の前に座っているだけの時間がいかに長いことか。おまけに、いざ書こうとすると気負ってしまって、ペンが進まない」と告白している。
 近藤の慶応大学時代の友人、小林清一郎(元富士製鉄常務)の証言がおもしろい。
 「近藤クンは賭博師の素質があったね。賭け事がメシより好きで、よくハハ(花札)をしたな。あるときなど、下宿を訪ねたらモヌケのカラだったんで、下宿のオバサンに聞いたら『2階の窓を開け放ってパチパチ花札を打っていたら、オマワリに踏み込まれた』そうで鳥居坂警察署にパクラレたりもしたな」(アサヒ芸能、昭和47年4月6日号)
 そんなことでやめるような男ではない。

(写真は日本相場師列伝より)

【 鍋島 高明(なべしま たかはる)略歴 】

昭和11年高知県生まれ。34年早大政経卒、日本経済新聞社入社。
47年商品部次長、夕刊コラム「十字路」に執筆。
58年同編集委員、夕刊「鐘」、朝刊「中外時評」に6年間執筆。
日経電子版に『相場師列伝』連載中。
インターネット上の「鈴木商店記念館」監修。

日経産業消費研究所、日経総合販売を経て、
平成9年友人5人で(株)市場経済研究所を設立、現在代表取締役。

■著書
『日本相場師列伝』『日本相場師列伝U』『語り継がれる名相場師たち』(以上日経ビジネス人文庫)、「海坊主と恐れられた男 岩崎弥太郎」「大番頭金子直吉」(高知新聞社)
『ヘタな経済書より名作に学べ 金と相場』(河出書房新社)、
『鎧橋のほとりで』(米穀新聞社)、『北内正男と二家勝明−たどり着いて未だ山麓』