株式会社市場経済研究所

市場研コラム

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人物秘話、ときどき相場談義 7[鍋島高明](2014.10.23)

新宿将軍浜野茂
独特のヘッジを実践

読売新聞S32.8.14夕刊2面

 日本一の相場記者、野城久吉(やしろ・ひさきち)の代表作「商機」〔明治43年、民友社刊〕は1,000ページを超す大著だが、相場に関心を持つ者には必須の手引き書といえるだろう。100年の時を経て、いまも燦然たる輝きを失わない。付録として収められている「金言例釈」のところを開いてみた。野城記者はいう。
 「飛ぶ前に四辺を見よ。されど動かないものは決して作ることなし」(相場を仕掛ける前に慎重に経済界の状況を調べることは大切で、あわてて仕掛けるのは失敗のもと。しかし、だからといって考え込んでばかりいて、仕掛けなければとうてい一物をも作り出すことはできない。相場は危険だからといって、相場を十分に知るまでは相場はしないということでは、ついに一物も相場から得ることはできない)
 「株券を買うに当たっては、収益力が市価以上にあるものを選べ」(安物買いの鼻落としに注意しようと呼び掛ける。一般に安物買いのゼニ失いというが、鼻落としとは安い女に手を出して悪病をもらい鼻を落とすなよとの警告である。安い株、安いコメはそれなりの理由があって低迷しているのを忘れて、値に惚れて買うのは失敗のもと)。
 「株券を買うに当たっては、収益力が市価以上にあるものを選べ」(安物買いの鼻落としに注意しようと呼び掛ける。一般に安物買いのゼニ失いというが、鼻落としとは安い女に手を出して悪病をもらい鼻を落とすなよとの警告である。安い株、安いコメはそれなりの理由があって低迷しているのを忘れて、値に惚れて買うのは失敗のもと)  「少額でも再々もうければ財布は満ちる」(小相場などすくっても始まらぬ、大相場で一攫千金を狙うという気持ちは投機家皆に共通しているかも知れない。だが、ちりも積もれば山となる−これもまた真理。新宿将軍と称された浜野茂は全盛期には白銅将軍の異名で呼ばれた。それはわずか5銭の利でもすかさず食らいついていたからだ)
  浜野茂はこの白銅的な相場の振り方をやった理由をこう述べている。
 「1,000枚仕掛けるとして500枚は自分の予想した相場が出るまでは少しも動かされない。残りの500枚は5銭でも10銭でも利が出れば利食いしていくと、初めに建てた玉が10円で買ったものなら8円の買い値となり、6円ともなっていく。いわば家を保護する垣根を作るに似ている」
  そういえば垣根のことを英語でヘッジ(Hedge)。大相場師浜野茂は明治時代からすでに独特なリスクヘッジを心掛けていたわけだ。(つづく)

(写真は読売新聞S32.8.14夕刊2面)

【 鍋島 高明(なべしま たかはる)略歴 】

昭和11年高知県生まれ。34年早大政経卒、日本経済新聞社入社。
47年商品部次長、夕刊コラム「十字路」に執筆。
58年同編集委員、夕刊「鐘」、朝刊「中外時評」に6年間執筆。
日経電子版に『相場師列伝』連載中。
インターネット上の「鈴木商店記念館」監修。

日経産業消費研究所、日経総合販売を経て、
平成9年友人5人で(株)市場経済研究所を設立、現在代表取締役。

■著書
『日本相場師列伝』『日本相場師列伝U』『語り継がれる名相場師たち』(以上日経ビジネス人文庫)、「海坊主と恐れられた男 岩崎弥太郎」「大番頭金子直吉」(高知新聞社)
『ヘタな経済書より名作に学べ 金と相場』(河出書房新社)、
『鎧橋のほとりで』(米穀新聞社)、『北内正男と二家勝明−たどり着いて未だ山麓』